相続税対策の一つに、金銭を相続税法上の評価額が低くなる資産に代替するという手法がありますが、その代表例とも言えるタワーマンションなどの居住用の区分所有財産につきましては、令和6年以後評価方法が従来の方法から変更され、いわゆるマンション通達と呼ばれる個別通達の計算方法によることとなっております。
適用対象の範囲
分譲マンションなどについて相続・遺贈・贈与が発生した場合、令和6年以後は基本的には評価額が割増となる改正後の計算方法を用いて、相続税や贈与税の計算を行います。
|居住用の区分所有財産
個別通達による評価の対象となるものは、居住用の区分所有財産です。居住用の区分所有財産の定義は次の通りです。
また、居住の用に供する専有部分とは、一室の専有部分について、構造上主として居住の用途に供することができるものをいい、原則登記事項証明書における建物の種類に「居宅」と記載されているものが該当します。
もし、事業に利用していたとしても登記事項証明書における記載が居宅であり、居住用として利用が可能であれば、個別通達の適用対象となります。
|対象とならないもの
分譲マンションであっても、個別通達の適用の対象とならない物件を相続等した場合は、従来通りの方法により評価を行います。適用対象外となるのは下記の場合です。
a)事業用テナント物件など居住利用ができないもの
b)一棟所有の賃貸マンションなど区分建物の登記がされていないもの
c)地階(地下)を除く総階数が2以下のもの
d)二世帯住宅など(居住用専有部分一室の数が3以下かつ区分所有者等が居住)
e)たな卸商品等に該当するもの
d)のかっこ書きは、本人又はその親族が居住しているケースです。例えば4階建ての建物で、1階はテナントが入居しており、2階から4階までを本人又はその親族が居住利用しているときは、対象外となります。
一方で、3階建ての物件で2階と3階に親族と本人が居住し、1階に友人が居住しているようなケースは適用対象となります。
個別通達による計算方法
マンションなどの区分所有建物を評価する場合、土地の部分と建物の部分をそれぞれ評価します。土地につきましては敷地全体の評価額を算定し、それに敷地権の割合を乗じた金額となります。
|計算方法の解説
当該個別通達が適用される場合の、区分所有権及び敷地利用権の評価に係る計算式は次の通りで、従来の評価額に区分所有補正率を乗じます。
・区分所有権
家屋の固定資産税評価額 × 区分所有補正率
・施設利用権
路線価を基とした1㎡当たりの価額 × 地積 × 敷地権の割合 × 区分所有補正率
路線価が付されていない場合は、固定資産税評価額 × 評価倍率 により敷地全体の価額を計算します。なお、ここでは奥行価格補正計算などは省略しております。
区分所有補正率についてですが、その前に評価乖離率及び評価水準の説明をいたします。まず、評価乖離率とは、いわば居住用の区分所有財産の市場取引価格が相続税評価額の何倍程度かを示す指標です。
評価乖離率は次の計算式により求めます。
評価乖離率 = A + B + C + D +3.220
A=一棟の区分所有建物の築年数 × △0.033
B=一棟の区分所有建物の総階数指数 × 0.239
C=一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階 × 0.018
D=一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度 × △1.195
Aの築年数は建築の時から課税時期までの期間で端数は1年とします。
Bの総階数指数は 総階数 ÷ 33で求めます(小数点以下第4位切捨)。1を超える場合は1とします。
Cの専有部分が地階である場合はゼロとします。メゾネットタイプは下の階とします。
Dの敷地持分狭小度は 敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の面積 で求めます(小数点以下第4位切上) 。
続きまして、評価水準とは 1 ÷ 評価乖離率 で求めた数値をいいます。こちらは逆に、市場取引価格のうちに相続税評価額が占める割合を示す指標と考えますと理解しやすいです。
そしてようやく区分所有補正率ですが、評価水準の区分により次のようになります。
① 評価水準<0.6 のとき → 評価乖離率 × 0.6
② 0.6≦評価水準≦1 のとき → 補正なし
③ 1<評価水準 のとき → 評価乖離率
評価乖離率がゼロ又はマイナスの場合には、区分所有権および敷地利用権の価額は評価しないこととされております。
区分所有者が一棟の区分所有建物に存するすべての専有部分および一棟の区分所有建物の敷地のいずれも単独で所有している場合には、敷地利用権に係る区分所有補正率は1を下限とします。
|計算に用いる資料
評価にあたりましては、固定資産税課税明細書、路線価図・評価倍率表(国税庁ホームページを参照)、登記事項証明書を用意し、居住者の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書を使って計算します。
評価乖離率の計算ですが、計算に必要となる上述の各数値等に関する情報は、登記事項証明書の表題部に掲載されていますので、そちらから引用します。
小規模宅地等の特例を適用する場合は、当該個別通達による評価額を基に評価減を行います。なお、貸付事業用宅地等の場合、事業的規模で貸付を行っているケースを除き、3年内に取得した物件には適用がありませんので注意が必要です。
テーマのポイント(Points to note)
個別通達によりマンションの相続税評価額と市場価格との乖離は、一戸建て住宅の価格差に近い形となりました。
それでも高額なタワーマンションの場合、従来ほどではないにしても、依然として金額の差がありますので、現預金で資産を所持しているよりも相続時には有利に働くと言えます。
上記の計算式からも分かりますが、築年数が新しくかつ階層が高いほど個別通達による評価額は上がる傾向にあります。
一方で、築年数が古く敷地面積が大きい物件は「評価無し」となることもあり得ます。但し、評価無しとなった場合であっても、その物件について高額な価額で取引が行われるのであれば、財産評価基本通達総則6項の規定により否認される可能性も有ります。
これまでと同様に評価額と市場価格との乖離が大きい場合は注意が必要です。コストはかかりますが、不動産鑑定評価を行うことも総則6項への対策として有効と考えられます。
There is still a difference between the market transaction price and the inheritance tax valuation of expensive high-rise condominiums, so holding them would be more effective than cash or deposits at the time of inheritance.
Even if the valuation is determined in accordance with the revised rule, when the difference is large, it may be denied by tax officials during a tax audit. One of the method of avoiding tax disallowance is conducting a real estate appraisal though it entails costs.






