少額減価償却資産の取扱いまとめ【要件や別表など】

減価償却資産は、通常耐用年数にわたり減価償却を通じて一定金額が損金に算入されますが、少額減価償却資産は取得・事業供用した年度に全額算入することが可能です。今回は少額減価償却資産の詳細について税制改正も含めて解説いたします。

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少額減価償却資産の概要

まずは減価償却資産の意義ですが、次のようになります。

棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち償却をすべきものとして一定のものをいい、事業供用されていないもの及び時の経過により価値が減少しないものを除く。

 

ソフトウエアや特許権などの無形固定資産も対象となります。一方、販売用の資産や土地などは対象外です。

少額減価償却資産の規定の内容についてですが、「少額減価償却資産」、「一括償却資産」、「中小企業者等の特例」に分けて説明いたします。

|少額減価償却資産

使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の減価償却資産で、事業供用年度に損金経理をした場合は、その取得価額は全額当該事業年度において損金算入※されます。

※個人事業主の場合は必要経費。以下同じ。

使用可能期間についてですが、営む業種において一般的に消耗性のものと認識され、かつその平均的な使用状況等からみて1年未満であるものをいいます。

取得価額が10万円未満かどうかの判定は、通常1単位として取引されるその単位ごとに行います。取得価額には付随費用も含まれます。

なお、所有権移転外リース取引に係るリース資産や外国法人等に対するリース取引に係る国外リース資産は対象外となります。

|一括償却資産

取得価額が20万円未満の減価償却資産を事業供用し、その全部又は特定の一部を一括したものをその事業年度以後の費用とする方法を選択し、その金額を損金経理したときは、次の損金算入限度額に達するまでの金額が損金算入されます。

【損金算入限度額】 取得価額の合計額 × 事業年度月数 ÷ 36

※いわゆる3分の1償却です。

期中に取得した場合であっても月数按分は不要で、取得価額の3分の1償却となります。一方で、事業開始年度など事業年度の月数が12ヶ月でないときは、損金算入額は取得価額の3分の1の金額とはなりませんので注意が必要です。

なお、一括償却資産とした資産を売却又は除却した場合であっても、未償却残高を全額損金算入することはできず、3分の1償却は継続されます。

上記の少額減価償却資産の適用を受けた資産は対象外となります。

通常の減価償却を行った方が有利となる場合がありますので、事前に検討をした上で判断することをお勧め致します。

 

|中小企業者等の特例

この特例の適用を受けることができるのは、青色申告を行っている中小企業者等に限ります(上記の少額減価償却資産や一括償却資産を選択したものを除きます)。

中小企業者等が取得する10万円以上30万円未満の減価償却資産は、取得・事業供用し損金経理を行った場合、その事業年度に損金算入することが出来ます。但し、年3百万円までに達する金額が上限です。

この特例では所有権移転外リース取引により賃借人が取得した資産も対象となります。

なお、設立年度など事業年度が1年に満たない場合は3百万円を12で除し、その事業年度の月数を乗じた金額となります。

資本金が1億円以下であったとしても、中小企業者等に該当しない場合はこの規定の適用はありません。特に子会社の場合は大規模法人の判定には注意が必要です。詳細はこちらの記事をご参照ください。

 

また、前3事業年度の平均所得が15億円を超えますと適用除外事業者とされ、この規定は適用できません。

 

留意事項

ここでは少額減価償却資産の判定における留意事項を取り上げたいと思います。

|取得価額

取得価額の金額の判定ですが、減価償却資産本体金額の他にも付随費用事業供用費用を加えます。購入の場合における具体的な付随費用及び事業供用費用の例としましては以下のものが挙げられます。

【付随費用】

引取運賃、荷役費、購入手数料、関税など

【事業供用費用】

設置費用、試運転費用など

 

一方で次のものは取得価額に含めなくてもよいものとされております。

    • 資産取得に係る借入利子、不動産取得税、登録免許税、自動車取得税など
    • 建物の建設等の為に行った調査費用等で建設計画変更により不要となったものに係る費用
    • 固定資産取得に係る締結済みの契約を解除して他の固定資産を取得した場合の違約金
    • 自社利用ソフトウエアで、その利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかなものなど

 

なお、自己の建設等による取得の場合は、原材料費、労務費、経費及び事業供用費用が取得価額となります。

消費税につき税込経理を行っている場合は税込金額で、税抜経理を行っている場合は税抜金額で取得価額の金額判定を行います。

|判定の単位

判定は1個ずつではなく、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定を行います。応接セットであれば椅子とテーブルの組み合わせで判定し、カーテンであれば、1枚ではなく同じ部屋内で利用される全ての枚数で判定します。

間仕切りパネルも1枚毎ではなく、設置した後の写真や設置図面などに基づき実態を確認して判断します。

|資本的支出

取得済みの減価償却資産に係る資本的支出については、原則少額減価償却資産の損金算入の規定の対象外となります。

既存資産の修理又は改良等に係る費用は、少額減価償却資産の判定ではなく資本的支出か修繕費かの判定を行うこととなります。

但し、資本的支出に該当する場合であっても、一の修理、改良等の為に要した費用の額が20万円未満の場合や、その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既存の実績等から明らかである場合は損金経理により支出額全額が損金算入されます。

【事例1】ホームページのプログラムの改修を行った場合

新たな機能の追加等であれば資本的支出となり、プログラムの機能の障害の除去や現状の効用の維持等であれば修繕費となります。

 

【事例2】購入済みの車両にカーナビ機器を新たに取り付けた場合

車両と耐用年数を同じくする減価償却資産の取得とみなされます。但し、あくまでも資本的支出扱いですので少額減価償却資産の規定は適用されません。20万円未満であれば修繕費として損金算入されます。

|償却資産税

少額減価償却資産や一括償却資産は償却資産税の申告対象にはなりませんが、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を適用した減価償却資産につきましては、損金算入されたとしても償却資産税の申告の対象となります。

償却資産税は償却資産の合計が150万円以上の場合は申告が必要となります。償却資産税の申告期限は1月末日です。なお、自動車やソフトウエアなどは対象から外れます。またリース資産は原則リース会社が申告を行います。

 

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令和4年度税制改正

令和4年4月1日以後に取得した減価償却資産につきましては取扱いが異なる場合がありますので注意が必要です。

|改正の内容

令和4年4月1日以後に貸付目的で取得した減価償却資産については、少額減価償却資産の取得価額の損金算入、一括償却資産、中小企業者等の少額減価償却資産の特例のいずれも対象外となります。

改正の理由はドローン、建設足場、LED等を購入し、これらをオペレーティングリース契約により他社へ貸付けることによる税金の圧縮(正確には課税の繰延)を狙ったスキームを封じる為です。

除外対象となった資産につきましては、耐用年数により通常の減価償却を行うこととなります。

|除外規定

主たる事業が物品賃貸業やリース業などの貸付業の場合は、取得した減価償却資産を貸付の用に供しても従来通り損金算入が認められます。

グループ企業内で親会社が子会社において利用する少額減価償却資産を購入窓口となって一括購入する場合もこの改正の対象から除かれます。

 

別表の記入

一括償却資産又は中小企業者等の特例を選択した場合には、確定申告書に別表を添付します。

|一括償却資産の明細

法人の申告にあたりましては、別表十六(八)一括償却資産の損金算入に関する明細書を添付します。一番右の列に当事業年度取得分を記入し、左列に行くにつれ古いものを記入します。「当期の月数」ですが、事業供用月数ではなく当事業年度の月数を記入します。「当期損金経理額」には費用計上した一括償却資産の金額(通常取得価額)を記入します。

「損金算入限度超過額」ですが、「前期からの繰越」には前事業年度の別表における「翌期への繰越額」を記入し、当事業年度の「翌期への繰越額」は当事業年度分の2/3の金額、前事業年度分の1/3の金額が記入されることとなります。

当期、前期及び前々期にそれぞれ15万円の一括償却資産を取得した場合は上記のような記入となります。

個人事業主の場合は、青色決算書の3ページ【減価償却費の計算】において、減価償却資産の名称等に一括償却資産と記入し、償却率は1/3と記入します。

|中小企業者等の特例の明細

法人の申告にあたりましては、別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書を添付します。

「種類」、「構造」、「細目」は耐用年数省令に定める種類、構造及び細目に従って記入します。

圧縮記帳を行っている場合で直接減額方式ではなく、積立金経理による処理を行ったときは、「法人税法上の圧縮記帳による積立金計上額」に記入します。なお、金額の判定ですが圧縮記帳を行っている場合は圧縮記帳後の金額で行います。

但し、この規定と重複適用ができるのは国庫補助金による取得など法人税法による圧縮記帳のみで、特定資産の買換えなど措置法による圧縮記帳は適用できません。

最後に合計額が3百万円を超えていないか確認をします。

個人事業主の場合は、青色決算書の3ページ【減価償却費の計算】において、備考欄に措法28の2と記入します。

 

まとめ(Conclusion)

当初の計画よりも利益が計上されることが見込まれ、税負担が心配な場合には節税方法として利用がしやすい少額減価償却資産ですが、金額の判定や要件充足の判断を誤ると期待した効果が得られないリスクもあります。

確実な節税を行うには、取得した減価償却資産につき決算前に改めてチェックを行うことが大切です。

Acquisition of small depreciable assets as deductible expenses is easy to use for tax saving when it is expected that profit will increase more than original business plan and future tax burden makes anxious. Though, unless the requirements of acquisition cost or others fulfill, tax burden might not decrease so much as expected.

It is crucial that acquired depreciable assets are reviewed again before the end of the fiscal year.

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