リース取引の会計処理ですが、オペレーションリース取引は賃貸借処理をし、ファイナンスリース取引は売買処理(資産計上)を行いますが、2027年4月から適用される新会計基準では、オペレーションリース取引であっても原則資産計上が求めれます。結果、税務との差異については申告調整が必要となります。
目次
現行のリース取引
まずは、現行のリース取引に係る会計と税務について見てまいります。平成20年4月1日以後契約のリース取引は、賃貸借取引とされるオペレーションリース取引と、売買取引とされるファイナンスリース取引に分類されます。
|税法上のリース取引
税法上のリース取引ですが、次の①及び②の条件を満たす資産の賃貸借取引をいいます。
①ノンキャンセラブル要件
②フルペイアウト要件
①の要件ですが、リース料の合計額の概ね全部とは原則90%以上です。
②の要件ですが、契約解除ができない期間中に賃借人が支払うリース料の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額の概ね90%を超える場合には、リース資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされているものに該当します。
即ち税務上のリース取引とは、売買取引とされるファイナンスリースのみが該当します。さらにファイナンスリース取引は、所有権移転リース取引と所有権移転外リース取引に分類されます。
|所有権移転と所有権移転外の判定
まず、所有権移転外リース取引ですが、次のいずれにも該当しないものをいいます。
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- リース期間の終了時又は中途において、契約にて定められているリース取引の目的とされている資産が、無償又は名目的な対価の額で賃借人に譲渡されるもの。
- リース期間の終了時又は中途においてリース資産を著しく有利な価額で買い取る権利が賃借人に与えられているもの。
- リース資産が、その使用可能期間中その賃借人によってのみ使用されると見込まれるもの又はリース資産の識別が困難であると認められるもの。
- リース期間がリース資産の法定耐用年数に比して相当短いもの(賃借人の法人税の負担を著しく軽減することになると認められるものに限ります)。
- リース期間の終了時又は中途において、契約にて定められているリース取引の目的とされている資産が、無償又は名目的な対価の額で賃借人に譲渡されるもの。
a.ですが、リース期間終了後、無償と変わらない名目的な再リース料によって再リースをすることが契約において定められているものも該当します。
b.ですが、買取り価額が賃貸人における未償却残高以上の場合は該当しません。
c.ですが、識別困難なものの例として建設現場の足場などが該当します。
d.ですが、耐用年数が10年未満の場合は耐用年数の70%、10年以上の場合は耐用年数の60%で判断します。
a.~ d.のいずれかに該当する場合は、所有権移転リース取引となります。
|金銭の貸付とされるもの
所有する資産を譲渡人が譲受人へ譲渡した後、譲受人(賃貸人)から譲渡人(賃借人)にリースすることを予め条件としている取引をセールアンドリースバックといいます。この場合、その資産の種類等に照らして一連の取引が実質的に金銭の貸借と認められるときは、その売買はなかったものとし、譲受人から譲渡人への金銭の貸付があったものとされます。
従いまして譲渡人はその資産につき減価償却を行い、また、借入金に係る支払利息を費用計上することとなります。
なお、譲渡 → 貸付 の形態をとっていたとしても、多種類の資産を導入する必要があるため譲渡人において資産を購入した方が事務効率が図られる等の理由により行われる場合は、金銭の貸付とは扱われません。
リース取引の税務
続いて、リース取引を行った場合における税務上留意すべき項目を取り上げてみます。
|減価償却方法
売買処理を行うリース取引に係るリース資産の取得価額は、原則リース料総額となります。但し、利息部分を明確に区分できる場合は、リース料総額から利息部分を除いた金額とすることができます。
減価償却の方法は次のようになります。
・所有権移転外リース取引:リース期間定額法
・所有権移転リース取引:資産の種類に応じてその法人が選定している償却方法
リース資産について、賃借料として損金経理した金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれることとなります。
|消費税の取扱い
リース資産に係る消費税の取扱いですが、オペレーションリース取引における賃借人は、リース料総額に係る消費税をリース期間中の各課税期間において支払リース料につき仕入控除することとなります(分割控除)。
ファイナンスリース取引につき売買処理を行った場合で、リース取引に係る資産の譲受けが課税仕入れに該当するときは、その課税仕入れを行った日がそのリース資産の引渡し日となり、その引渡課税期間においてリース料総額につき仕入控除を行います(一括控除)。
なお、所有権移転外リース取引で賃貸借処理を行った場合は、一括控除ではなく、分割控除を行うことも認められます。
|特別償却又は税額控除
設備投資に係る税額控除等の規定としまして、中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制がありますが、取得資産がファイナンスリース取引に係るリース資産である場合の取扱いは次のようになります。
・所有権移転外リース取引:税額控除のみ適用可
・所有権移転リース取引:特別償却又は税額控除の選択適用
リース取引に係る改正事項
令和9年4月以後開始事業年度より適用される新リース会計基準におきましては、「リース」の定義にあてはまるものは原則全て資産計上する必要があります。適用対象となる法人は、上場企業の他に、上場企業の子会社や会社法における会計監査人設置会社となります。
|リース会計基準の改正
改正後における借手側の会計処理についてですが、リースの開始日には、
(借方) 使用権資産 (貸方) リース債務
という仕訳を行います。使用権資産は別の固定資産の名称でも構いません。この時に計上する金額は、現在価値の金額となります。なお、重要性が乏しいと認められる場合は、リース料から利息相当額を控除しない方法を用いることも可能です。
リース料の各支払日には、
(借方) リース債務 (貸方) 現金預金
支払利息
という仕訳を行い、そして決算日には、
(借方) 減価償却費 (貸方) 減価償却累計額
という仕訳を行います。
現在価値の計算はエクセルで行うことも可能です、例としまして、リース期間6年、月額リース料1万5千円、借手の追加利子率が2.5%としますと、計算結果は次のようになります。

B5セルには =B3*((1-(1/(1+(B4/12))^B2))/(B4/12)) という算式を入力しております。この例では1,001,936円が使用権資産の計上額となります(リース料総額は1,080,000円)。
オペレーションリース取引について資産及び負債計上を行う場合、税務においては従前どおり支払リース料のみを損金算入することとなる為、申告調整が必要となります。会計上はその事業年度中に生じた支払利息と減価償却費が費用計上され、税務上の金額との間に差異が生じます。
上記の例で、仮に期首からリースを開始したとしますと、差異の金額は、
23,261円+166,989円-180,000円=10,250円
となり、10,250円を減価償却超過額として別表四において加算し、かつ別表五(一)に増加計上することとなります。
会計と税務における差異については、当初加算調整であっても途中から減算調整となり、リース期間終了時には差異は解消されることとなります。
|令和7年度税制改正
リース取引に関する令和7年度税制改正の内容ですが、次のものがあります。
・リース譲渡
賃貸人が適用することができたリース譲渡収益の繰延処理ですが、令和7年4月1日以後開始事業年度から廃止となりました。適用後の事業年度においてリース譲渡を行った場合は、引渡し時において譲渡損益を一括計上する必要があります。なお、一定の場合には経過措置が適用されます。
・残価保証額
残価保証の定めのある所有権移転外リース取引に係る減価償却の方法ですが、令和9年4月1日以後締結されたリース契約については、リース期間定額法の計算において、取得価額から残価保証額を控除しないこととなりました(1円の備忘価額を残します)。
改正後の償却限度額の計算方法は次のようになります。
取得価額 × その事業年度のリース期間の月数 ÷ リース期間の月数
まとめ(Conclusion)
会計監査を受けている企業は、新リース会計の適用開始前に連結対象の子会社も含め利用しているリース契約の洗い出しと契約内容の確認作業が必要となります。一方で中小企業におかれましては、実務上の変更点はありません。但し、税務上の影響があるリース取引(特にフルペイアウト)の判定には注意をしましょう。
The companies undergoing audit need to review and examine the details of their lease contracts including the ones consolidated subsidiaries have entered into before the revised lease accounting standard is effective.
Meanwhile, small and medium sized companies won’t be affected by this revision. Though it would be good for them to pay attention the determination of whether finance lease transaction or operation lease transaction as usual because it will affect their tax burden.






