輸入販売を行う事業者は、外国貨物を保税地域から引き取る際に輸入申告書を税関長に提出して輸入許可を受け、同時に関税及び消費税の申告と納付を行います。課税貨物に係る消費税は、国内課税仕入に係る消費税とは異なる特徴が多数ある為、知識や準備が必要となってまいります。
目次
輸入取引に係る消費税
税関での輸入手続きについてですが、輸入品を受け取るには輸入申告書に品名・数量・金額等を記載し、審査の後、輸入許可を得て関税と併せて消費税の申告と納付を行います。
|消費税の計算等
外国貨物を保税地域から引き取る者は、免税事業者や事業を行っていない個人であっても消費税を納める義務があります。
課税貨物に係る消費税の課税標準は、関税課税価格(CIF価格)に消費税以外の個別消費税(酒税・たばこ税等)と関税を加算した金額となります。
関税課税価格は次の算式により求めます。
関税課税価格(CIF価格※)=本体価格+輸送費+保険料等
※Cost, Insurance and Freight の略です。
CIFとはインコタームズと呼ばれる貿易取引規則の一つです。インコタームズ2010年度版には11種類の規則が存在します。これらは主に売主と買主の危険の移転の分岐点と費用負担を示しております。
販売先との契約内容がCIF以外のインコタームズとなっている場合ですが、運送料や保険料の負担、海上における事故や荷卸し事故の責任を売主又は買主のどちらが担うか関わらず、課税貨物に係る消費税額の計算は上記算式により行います。
課税貨物に係る消費税は、国内への入国する者の携帯品など賦課課税方式が適用される場合を除き、申告納税方式が適用されます。課税貨物を保税地域から引き取ろうとする者は、課税貨物に関する以下の事項を記載した申告書を税関長に提出します。
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- 申告者の氏名・住所等
- 保税地域の所在地
- 輸入先の国名
- 品名、数量および課税標準
- 課税標準に対する消費税額等
- その他参考事項
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なお、保税地域において外国貨物が課税貨物の原材料として消費又は使用された場合には、その時に引き取るものとみなされ消費税が課税されます。
|輸入代行
会社が輸入手続きを通関業者に委託して行う場合ですが、輸入申告者が代理業者であり、かつ代理業者が消費税を納めている場合は、当該会社はその消費税を負担したとしても仕入控除を行うことはできません。
なお、会社が輸入申告者となり、輸入手続きを業者に代行させている場合は、その会社が仕入控除を行うことができます。
|課税されない貨物
外国貨物のうち次に掲げるものは、非課税貨物として消費税は課されません。
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- 有価証券等
- 郵便切手類、印紙、証紙
- 物品切手等
- 身体障害者用物品
- 教科用図書
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また輸入品であっても、関税定率法に規定する一定の貨物は関税が課されることはなく、輸徴法※に規定される貨物は消費税が免税となります。例としましては、見本品や引越荷物、再輸入貨物などがあります。
※輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律
|申告期限の延長
課税貨物に係る消費税の申告は、輸入申告と同時に行いますが、税関長の承認を得た場合は特例申告を行うことができます。特例申告における申告書の提出期限は、引取月の翌月末日です。
さらに納期限の延長制度が有ります。こちらは申請の他に担保の提供が必要となります。延長が認められた場合、一般申告については引取日の翌日から3ヶ月以内が納期限※となり、特例申告については上記期限から2ヶ月以内が納期限となります。
※特定月に引き取るときは特定月の末日の翌日から3ヶ月以内
課税貨物における仕入控除
保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税は、国内の課税仕入れと同じく控除対象仕入税額の計算対象となります。原則引取日の属する課税期間において計算を行います。但し、特例申告を行っている場合は特例申告書の提出日の属する課税期間となります。
|会計処理
通常の国内課税仕入であれば会計ソフトへの入力は、
(借方)仕入 ××× (貸方)買掛金 ×××
として、仕入勘定は自動で仮払消費税がたち貸借も一致しますが、輸入取引の場合は、仕入勘定には消費税を自動計算させずに別途消費税と地方消費税を仮払消費税勘定で計上するようにします(税抜経理の場合)。
このような処理を行う理由は2つあり、一つは取引がCIF以外の契約であれば輸入に係る仕入金額と消費税計算の課税標準となる金額が不一致であること、もう一つは年度の消費税申告において、国内課税仕入に係る消費税と課税貨物に係る消費税を区分する必要がある為です。
|申告書への記載
保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税額は、付表2-1の⑬に記入します。記載する金額は消費税のみで地方消費税は含みません。
国内課税仕入の場合は、支払対価の額に7.8/110(2019年10月1日以後の取引)を乗じた金額となりますが、課税貨物の場合は課された(又は課されるべき)消費税額となります。
輸入貨物が損傷のおそれのあるもの(e.g.冷凍肉)で、輸入許可前に引き取り、消費税の見積額を税関に納付した場合で、後日確定した消費税額が見積額と異なっていたときは、遡って修正は行わず、確定日の属する課税期間において加減算します。
|保存要件
仕入控除の適用を受けるには、国内課税仕入と同様に帳簿及び請求書等の保存が必要です。請求書等は一般的に輸入許可通知書(Import Permit)を用います。
帳簿には引取日、課税貨物の内容、課税貨物に係る消費税等を記入します。輸入許可通知書には以下の記載が有ることが要件となっております。
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- 納税地の所轄税関長
- 輸入許可を受けた年月日
- 課税貨物の内容
- 課税貨物に係る消費税の課税標準
- 引き取りに係る消費税等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名
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同書類の保存期間ですが、受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間となります。
還付等があった場合
注文品において品違いや不良品があった場合ですが、税関に納めた消費税の還付を受けたときは、その日の属する課税期間において控除対象仕入税額を減額する必要があります。
|値引について
海外の販売先から輸入品につき後日値引が行われた場合ですが、課税貨物に係る消費税額の計算には影響を及ぼしません。従いまして申告書には当初の消費税額を記入します。
|還付について
・輸入品に問題があり返品を行った場合
契約内容と相違する欠陥品を返品した場合は、納めた関税及び消費税の払い戻しを受けることができます。対象となるのは輸入時の性質、形状に変更を加えないもので輸入許可日から6ヶ月以内に保税地域に入れられたものに限ります。
・代替品を無償で輸入した場合
輸入品に欠陥があったため、代替品を無償で輸送してもらった場合で、その代替品が欠損品と同一品であるときは、もとの貨物の輸入申告時と同一の価格で申告します。但し、当初の輸入品につき輸入時の性質、形状に変更がない状態で輸入許可日から原則1年以内に再輸出した場合は、関税及び消費税の払い戻しが受けられます。
・税関の調査により修正申告をした場合
税関の調査を受け修正申告を行い、関税及び消費税の不足額を追加納付した場合ですが、対象となった過去の課税期間の消費税額は過大納付となるため、更正の請求を行うことにより消費税の還付を受けることができます。
通常の更正請求期間は5年間ですが、この場合は当該申告書を提出した日から2月以内に更正の請求を行わなければなりません。
その他の留意事項
最後にその他に留意すべき項目を取り上げます。
|調整計算
課税貨物が棚卸資産に該当する場合ですが、免税事業者から課税事業者になったときの期首棚卸資産に係る調整計算や、課税事業者から免税事業者になったときの期末棚卸資産に係る調整計算を行います。
留意点としましては、消費税計算は課税貨物の課税標準額、消費税額、付随費用の合計額に 7.8/110 (2019年10月1日以後の取引)を乗じて行います。
課税貨物が調整対象固定資産に該当する場合ですが、国内課税仕入と同様に用途の転用や課税売上割合の著しい変動に該当するときは、調整計算を行います。
|軽減税率について
保税地域から引き取られる課税貨物のうち、飲食料品に該当するものは軽減税率の対象となります。なお、人の飲食の用に供されるものかどうかは輸入時に判定されます。
売れ残った輸入品を後から他の用に供する目的に変更して販売したとしても、輸入(仕入)については軽減税率を適用します。
レストランへの販売目的の場合ですが、輸入は軽減税率を適用し、販売についても軽減税率を適用します。レストランが店内で行う食事の提供は、標準税率となります。
まとめ(Conclusion)
輸入取引は、国内課税仕入と比べますと手続きが煩雑で、馴染みのない書類も多く存在します。申告書の記載や税金計算におきまして十分な注意が必要です。通関業務は税理士は行うことができないため、通関業者と社内担当者と税理士の連携も重要となって参ります。
Import procedures are more complicated than the one of purchase in domestic, and many unfamiliar documents exist on them. So, careful attention should be paid to tax return and tax calculation. Certified tax accountants can’t deal with custom clearance. Therefore, communication among custom brokers, persons in charge at the company and certified tax accountants would be crucial.