個別対応方式と一括比例配分方式の違い

消費税の原則課税を採用しており、当課税期間の課税売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満になると、個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかを選択する必要があります。

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個別対応方式と一括比例配分方式の特徴

個別対応方式では、課税売上対応の仕入税額と、共通対応の仕入税額に課税売上割合を乗じた金額の合計額が控除税額となります。

一括比例配分方式では、課税仕入税額の合計額に課税売上割合を乗じた金額が控除税額となります。この方法を選択した場合には、2年間継続適用しなければなりません。

全額控除や簡易課税の方法によらない場合には、控除仕入税額の計算を上記のいずれかによらなければなりませんが、個別対応方式を選択したときは、課税仕入れを3つに区分する必要があります。

|個別対応の用途区分

課税仕入れについて、課税売上対応・非課税売上対応・共通対応に区分することとなります。非課税の仕入れ(住宅の家賃など)等については分ける必要はありません。

課税売上対応の例

課税売上となる商品の仕入、製品の原価、それに係る運送費、広告宣伝費など

非課税売上対応の例

土地売却に係る仲介手数料、造成費用、保険診療に係る医薬品購入費用など

共通対応の例

管理部門の事務費、水道光熱費など(注)

 

(注)課税売上にも非課税売上にも紐付きとなっていないものが、共通対応となります。

実務におきましては、会計システム上勘定科目に設定して対応しますが、状況によっては切り替える必要があります。なぜなら業種・経営方針・収入項目により、用途区分は変わってしまうからです。

例えば広告宣伝費でみますと、課税売上となる商品の宣伝の場合は課税売上対応となりますが、住宅の入居に関するものであれば非課税売上対応、企業名の宣伝であれば共通対応となります。

特に不動産業は複雑で、個々の取引を見ないと正確に判断することはできません。土地購入手数料の場合、土地の利用目的により区分が変わります。

土地を販売する目的・・・非課税売上対応

土地の上に建物を建てて販売する目的・・・共通対応

土地の上に建物を建てて住宅貸付の目的・・・非課税売上対応

土地の上に建物を建てて事務所貸付の目的・・・課税売上対応

 

一括比例配分方式を採用した場合は、全ての課税仕入れに課税売上割合を乗じて計算するため、区分の必要性はありません。

 

|用途区分の判定時期

用途区分の判定時期は、課税仕入れを行った時の用途で判断します。仮に用途の変更があっても、当初の用途の判断で良いこととなっております。

例えば土地を購入し、期末時点で用途が確定していないときは、それに係る手数料は共通対応となりますが、翌期になり、売却する(本来であれば非課税売上対応)こととなったとしても修正申告の必要はありません。

 

課税売上割合計算の特例

個別対応方式の場合において、共通対応部分を合理的な基準により、課税売上対応と非課税売上対応に区分することができます。

例)土地付建物の仲介手数料を土地と建物の時価比率で分解

ケースによっては、課税売上割合による計算よりも有利となることがあります。

|課税売上割合に準ずる割合

「課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を適用を受けようとする課税期間中に提出し、税務署長の承認を受けることにより、共通対応の仕入税額を課税売上割合以外の合理的な方法により算定することができます。

この割合は、事業の種類、費用の種類、事業場の単位ごとに承認を受けて適用することができます。従って課税売上による計算との併用も可能です。ただし承認を受けた部分に関しては、必ずその方法により計算することとなります。

具体的には部門の人員比や使用面積比などがあります。

なお、この適用を受けることをやめようとするときは、「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出します。

|たまたま土地の譲渡があった場合

毎期全額控除されている企業が、土地譲渡によりイレギュラー的に課税売上割合が95%未満となりますと、通常は控除されていた共通対応の仕入税額が大きく減少してしまうことがあります。

そのような場合には、税務署長の承認を得ることにより、次のうちいずれか低い割合により算定することができます。

(1)土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合

(2)土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

 

但し、あくまでも土地の譲渡が単発であり、事業の実態に変動がない等の要件を満たす場合に限ります。

注意事項としましては、翌期に不適用の届出を提出する必要があるということです。提出を忘れてしまいますと承認取消の処分がされます。

 

まとめ

一括比例配分方式を選択した場合には、課税仕入れの区分は不要ではあるものの、税負担額は変わります。

いずれの方法を採用した方が有利か検討し、期末近くになって個別対応方式を選ぶこととなったときには、最初から全ての課税仕入の区分を行わなければなりません。そうならない為にも、まずは勘定科目による判別だけでも実施することをお勧めいたします。

気を付けなければならないのが、いずれかを選択し、申告した場合で、後から計算しなおした結果、もう一方の計算方法が有利であることが判明したとしても、更正の請求でやり直すことはできません

従って、土地や建物など金額の大きな動きがある場合には、事前の準備をすることにより、税金支出を抑えることができると言えるでしょう。

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