長年にわたってデフレ経済が続いており、事業者においては販売を伸ばすために低価格設定の他、ポイントの付与やクーポン券の発行など様々な販売促進活動を行っておりますが、これらに係る税務上の取扱いはどのようになるのかポイントを解説したいと思います。
目次
販売促進費用の税務上の取扱い
販売促進活動の代表例である売上割戻しの他、その対になる仕入割戻し、そして抽選券やクーポン券を付した場合について取り上げます。
|売上割戻し
売上割戻しとは一定量の売上に対して行うキックバックやリベートなどのことで、売上割戻しの損金計上のタイミングはその内容により異なります。
ケース | 内容 | 計上時期 |
(1) | 算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ契約等によりそれを相手に明示している | 販売日の属する事業年度 |
(2) | (1)の場合で継続して通知日又は支払日の属する事業年度に計上している | 通知日又は支払日の属する事業年度 |
(3) | (1)(2)以外の場合 | 通知日又は支払日の属する事業年度 |
(4) | (3)の場合で販売した棚卸資産について売上割戻しを支払い、算定基準が内部で定められており、それに基づき未払金計上を行い、かつ申告書提出期限までに相手に通知したとき(毎期継続) | 未払金計上したものはその事業年度 |
相手への明示は口頭ではなく文書で行いましょう。なお、取引先によって算定基準が異なっている場合でも相当の理由があるときは認められます。
売上金額によって段階的に割戻金が異なる算定方法を用いている場合で、事業年度末に売上総額が確定していないときは、その時の現況により計算した額を損金算入することができます。
|仕入割戻し
購入者が販売者より上記の売上割戻しを受けた場合は、仕入割戻しとして処理することとなります。その計上時期は次のようになります。
ケース | 内容 | 計上時期 |
(5) | 算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ契約等によりそれを相手に明示している | 購入日の属する事業年度 |
(6) | (5)以外の場合 | 通知日の属する事業年度 |
なお、一定期間支払いを受けないときは現実に支払いを受けた日に計上します。但し、法人が棚卸資産の購入日又は通知日の属する事業年度に未収計上しているときはその経理した事業年度に益金算入します。
|抽選券付販売
当選者に対し、金銭や商品の交付であったり、旅行や観劇などへの招待を行う抽選券を付して商品販売が行われることがありますが、これらに要する費用の計上時期は次のようになります。
a)引き換え請求のあった日又は旅行等を実施した日の属する事業年度
b)当選者からの請求を待たないで景品等を送付する場合は抽選日の属する事業年度(任意)
従いまして、当選の発表は発送をもって代えさせて頂いているときは、b)のケースに該当します。
|金品引換券付販売
いわゆるクーポン券付き販売ですが、引換えに係る金銭又は物品の代価相当額の計上時期は次のようになります。
c)引換え時に金銭又は物品を交付することとしているときは、引換日の属する事業年度
d)引換券が点数等で表示され、かつ1枚からでも引換えが可能な時は下記の計算式により計算した金額を販売事業年度において未払金計上することができます。
1枚(1点)について交付する金銭の額×その事業年度において発行した枚数(点数)
d)により未払金計上を行うときは確定申告書に明細書の添付が必要となります。また未払金は翌事業年度に益金算入します(洗替方式)。
交際費等との関係
販売促進費を支出する際は交際費等との区分を明確にしておくことが大事です。見方のポイントとしましては、消費者向けか事業者向けか、金銭等による支出かそれ以外のものによるものかです。
|交際費等に該当しないもの
得意先等、事業者に対する事業上の金銭のやりとりは、互いの収益と費用として計上される為、基本的には交際費等には該当しません。以下交際費等に該当しない事例を箇条書きで記載します。
・一定の基準を勘案して金銭等で支出する売上割戻し
・協力度合いにより金銭等で支出する販売奨励金
・特約店に対しての売掛金回収高に基づく事業用資産の交付
・上記による少額物品(3千円以下)の交付
・展示会等への得意先招待費用
・自社工場への見学費用
・自社製品のモニター謝礼金
その他カレンダー、手帳、うちわなど不特定多数の者への広告宣伝効果を意図するものは交際費等とはされません。
|交際費等に該当するもの
取引の謝礼など賄賂的な金品の交付であったり、総会対策費用などは交際費等となり、中小企業におきましても年間8百万円までの損金算入限度額が定められております。その他交際費等に該当する事例を箇条書きで記載します。
・得意先へのお祝い金、見舞金
・近隣対策費
・得意先等へのお歳暮贈答費用、旅行や観劇招待費用
・少額飲食費に該当しない接待飲食費
・得意先等の従業員への謝礼金
・社屋新築記念における宴会費等
なお、招待旅行に同行した社員の宿泊費や得意先の接待後のタクシー代も交際費等に該当します。
広告宣伝費について
販売促進活動と密接に関連があるのが広告宣伝費です。その内容及び計上時期についても確認していきたいと思います。
|広告宣伝費の税務
まずTVコマーシャルは放映時に損金計上となります。社歌については完成時に損金計上、ポスターの製作費は一旦資産計上し、使用に応じて損金算入することとなります。
ホームページ作成費用は作成時に損金算入されますが、1年以上更新がなかったり、ソフトウエアに該当する場合は資産計上します。
プリペイドカードは配布時に損金算入し、未配布分は資産計上をします。
|広告宣伝用資産の贈与
特約店等へ自社製品宣伝のため看板や自動車等を贈与又は著しく低い対価で譲渡した場合のその費用は繰延資産となります。当該繰延資産の償却期間は、耐用年数の70%と5年のうち短い方の年数です。
一方でその贈与を受けた場合は受贈益(専ら広告宣伝用の看板等除く)を計上します。この場合の経済的利益の算定は次の計算式によります。
製造業者等における取得価額×2/3-取得の為に支出した金額
なお、算定金額が30万円以下の場合は経済的利益はなしとされます。
まとめ(Conclusion)
最後に子会社業績悪化のため、子会社へ販売につき売上値引を行った場合、倒産等の危機的状況が切迫した状況でない限り本来の価格との差額は、寄附金として扱われます。
但し、親子間の取引であっても契約において合理的な原価計算の基礎に立ち、2社間で協議の上決定した価格を販売(購入)価格としているときは、期末又は期中決定価格が契約価格として認められ、値下げとの差額は寄付金ではないものとされます。