押さえておきたい印紙税の実務【課税判定など】

印紙税は文書に対して課税される税金で、うっかり収入印紙を貼り忘れたり、逆に不要な文書に貼ってしまったりするケースがあります。税務調査において法人税や消費税と同時に調査を受けることもある為、その仕組みをよく理解しておく必要があります。

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印紙税の概要

印紙税の課税文書は20種類あります。その中には段階税額のものと固定税額のものがあります。前者の例として不動産売買契約の1号文書や請負契約の2号文書があり、後者の例として売買取引基本契約といった継続的取引契約の7号文書があります。

※印紙税額の一覧はこちらになります(国税庁ホームページ)。

・第1号文書から第4号文書まで

・第5号文書から第20号文書まで

|課税文書の判定

課税文書の判定は、単に文書の名称や形式的な記載文言ではなく、実質的な意義に基づき判断します。印紙税は文書課税であるため、記載されていない事項は判断されません。一方で仮の契約書等であっても課税事項を証明するものであれば課税文書に該当するケースがあります。

印紙税の納税義務は文書の作成時に生じるため適時判断が重要となりますが、その課否判定は容易ではありません。例えば「請負」や「委任」については民法に規定されており、その記載内容により判断される為、当事者の思惑とは異なる判定がされることもあります。

請負契約は仕事の完成又は成果物に対して報酬を支払うことを約する契約で、委任契約は法律行為事務処理の委託に対して承諾する契約となります(完成度は問われません)。

(注)請負契約であれば課税文書、委任契約であれば非課税文書です。

 

また、会社内などにおいて課否判定を誤る事例としましては、

・通常の取引とは異なる内容の契約が発生したとき

・社内システム変更により伝票等が課税要件を満たしてしまったとき

・担当者の異動による引継ぎ漏れがあったとき

などが挙げられます。このようなケースでは特に注意が必要です。

|不課税文書

あらかじめ印紙税が課税されない文書(不課税文書)を知っておくと、実務におけるミスを減らすことができます。以下課税されない契約書を例示します。

①抵当権設定契約書や質権設定契約書

②建物賃貸借契約書やリース契約書

③アドバイザリー契約書やコンサルティング契約書

④商品売買契約書や株券譲渡契約書

⑤ソフトウェア使用許諾契約書など

 

【留意事項】

①ですが、担保権の設定のみであれば不課税ですが、債権譲渡担保権契約書などは課税文書となります。

②ですが、土地賃貸借契約書は課税文書(1号の2)となります。また土地の賃借料は同契約書における記載された金額に該当せず、契約金額の記載のないものとして必要な印紙は200円となります。

③ですが、成功報酬の記載がある場合であっても、結果を問わず法律行為に対して報酬を支払う契約であれば不課税です。

④ですが、商品売買であってもオーダーメイドの場合は請負契約扱いとなり、課税文書(2号)となります。

⑤ですが、あくまでも無体財産権の使用権の設定・譲渡に係るものとなります。特許権など無体財産そのものの譲渡契約書は課税文書(1号の1)となります。

 


また、電子化された文書については課税されません。

契約書にしましても領収書にしましても電子化された場合には、印紙税の貼り付けは不要です。例えば定款を見てみますと、電子定款であれば通常の手続きと比べ4万円の節約となります(印紙税額のみの比較です)。

なお、コピーされた文書やファックスの文書も課税はされません。

 


上記の他に課税されないケースとして海外取引があります。

印紙税は課税文書の作成場所が国外のときは課税されません。従いまして国際郵便による契約書のやり取りであれば、先に契約書に押印し、海外の取引先が後から押印することで印紙の貼り付けは不要となります。

その場合であっても税務調査に対する準備として、契約が締結された場所・年月日を記録しておくことが大切でしょう。

|罰則について

課税文書に印紙の貼り付けを行わない(納付を行わない)場合には印紙税の額の2倍の過怠税が課されます(トータルで3倍の負担)。調査を受ける前に自主的に申し出た場合の過怠税の額は、印紙税の額の1割となります(トータルで1.1倍の負担)。

また、収入印紙を貼っていても消印をしなかった場合は印紙と同額の過怠税が課されます(トータルで2倍の負担)。

なお、支払った過怠税は所得税における必要経費や法人税における損金には算入されません

 

種類別にみる課税文書

定められた課税文書には、契約書関連のものや証書関連のものなどあります。以下種類別にそれぞれの内容を見てまいります。

|契約書関連の文書

契約書に関する課税文書は1号、2号、5号、7号、12号、13号、14号、15号と数多くの種類があります。契約書とは次のように定義されております。

名称のいかんに関わらず、契約当事者間において契約の成立、更改、内容の変更や補充の事実を証明する目的で作成される文書

 

民法の「契約」に該当しますと、例えば製品仕様書であっても内容を承諾しサイン又は押印がされていれば、請負契約と判断されることもあります。

単なる仕様書を課税文書に該当しないようにするには、押印を文書を受け取ったことに対する受領印とするやり方などがあります。

なお、契約の解除に係るものは不課税です。

|証券又は証書関連の文書

3号文書の約束手形や4号文書の株券の他、貨物引換証(9号文書)や信用状(11号文書)、そして17号文書の売上代金に係る金銭の受取書(領収書)などが該当します。

ポスレジから打ち出されるレシートも課税文書に該当します。但し、記載された受取金額が5万円未満のものは非課税となります。なお、売掛金と買掛金の相殺に係る領収書は、金銭の受領が無いため印紙は不要です。

|通帳関連の文書

預貯金通帳や信託行為に関する通帳の他、判取帳が該当します。

判取帳とは1号、2号、14号又は17号文書により証されるべき事項につき、2以上の相手から付け込み証明を受ける目的をもって作成する帳簿をいいます。

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文書別にみる個別判定

資産の貸付であれば土地は課税、建物は不課税となり、役務提供であれば運送や請負などは課税、委任や雇用は不課税といった具合に覚えておくこともミスを防ぐ方法ではありますが、もう少し掘り下げてみていきたいと思います。

|契約書等に係る判定

商品売買契約書は前述の通り課税文書ではありませんが、3ヶ月以上取引が継続する場合は7号文書に該当し、特注の請負の場合は2号文書に該当することとなります。

7号文書である継続的取引の基本となる契約書該当非該当かの判定は、次の順番で行うとよいです。

ⓐ継続取引を行うための契約書ではない→非該当

ⓑ契約期間が3ヶ月以内→ⓒへ、3ヶ月超→ⓓへ

ⓒ契約更新の定めが無い→非該当、定め有→ⓓへ

ⓓ非営業者との取引→非該当、営業者との取引→ⓔへ

ⓔ取引内容が売買や請負等以外→非該当、売買や請負等→ⓕへ

ⓕ取引条件に単価等の定め無し→非該当、定め有→ⓖへ

ⓖ契約金額の記載が有る→該当、記載無し→ⓗへ

ⓗ1号文書又は2号文書にあてはまれば、1号文書又は2号文書となり、あてはまらなければ7号文書に該当します。

 

続きまして事例を取り上げて判定をしてみます。

中古車販売のケースですが、商品の売買については印紙税は課税されませんが、当事者間においてリサイクル預託金の授受が行われる為、債権譲渡に該当することとなり、15号文書として200円の印紙が必要となります※。

※記載された契約金額が1万円未満であれば非課税

大型機械の販売及び据付工事のケースですが、注文者の指示する一定の仕様に従って製作されるものであれば、契約金額全体が請負契約の2号文書となります。

しかし、一定の規格で統一した機械の制作であり、かつ本体価格と据付費用を区分しているときは、本体価格は商品販売として不課税となり、据付費用は請負契約の2号文書となります※。

※区分していない場合は全体が請負契約となります。

 

1つの文書に異なる号の課税事項が記載されており、かつ区分して金額が記載されているときは、その所属することとなる号の記載金額がその文書の記載金額となります。

 

|受取書に係る判定

領収書についてですが、上述の5万円未満の場合の他、「営業」に関しない受取書も非課税となります。国税庁HPにおいて、営業とは次のように説明されています。

一般通念では、利益を得る目的で同種の行為を継続的、反復的に行うことをいいます。営利目的がある限り、現実に利益を得ることができなかったとしても、また、当初、継続、反復の意思がある限り、1回でやめたとしても営業に該当します。

 

公益法人の他、弁護士や税理士などが交付する領収書は営業に関しない受取書となるため、非課税文書となります※。

※弁護士法人や税理士法人の場合は課税文書扱いです。

注意すべき点としましては、金銭又は有価証券を担保として受領したことの証書や、で受け取ったことの証明書であっても17号文書に該当します。

|その他の留意事項

消費税についてですが、1号,2号,17号文書において消費税額が区分されている場合又は税込金額と税抜金額が記載されている場合は、消費税額は課税物件表の記載金額には含めずに判定を行います。

10万円を超える不動産の譲渡に関する契約書及び100万円を超える一定の建設工事の請負契約書につきましては、2020年3月31日までに作成されるものは軽減措置の適用があります。

※軽減税額は国税庁ホームページをご参照ください。

 

2以上の事項が併記されている文書は、例えば1号又は2号文書とその他の号の文書であれば、その文書は1号又は2号文書として判定されます。

 

※この例の他にも号数、記載金額の有無や記載金額の大きさにより、文書の所属が判定されるケースがありますのでご留意ください。

 

まとめ(Conclusion)

印紙が必要かどうか判断するときは、①不課税文書に該当するか、②契約書であればタイプ毎に分ける、③スポット契約か、④条項を確認する、といった手順でチェックをかけるとよいでしょう。また、誤って印紙を貼ってしまった場合は、過誤納金として税務署から還付を受けることができます。

When judging necessity of revenue stamp, it would be better that you check following items. First, judge whether the document is applicable to non- taxable document or not. Second, if it is a contract, classify it the genre which it should belong. Third, judge whether it is a spot contract or not. Fourth, confirm articles which are written on it. If you apply excess revenue stamp to the document accidentally, you can receive the refund from the nearest tax office by submitting the designated application to it.

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