安易に簡易課税を選択していませんか

事業を始められ、経営が順風満帆で、売上が増えることは喜ばしいことですが、前々年又は前々事業年度の課税売上高が1千万円を超えますと、消費税の納税義務者となります。

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初めて消費税の納税義務者となったとき

これまで消費税とは無縁であった事業者様で、初めて課税事業者となったときに、特に考えることなく計算が簡単だからという理由で簡易課税を選択されている方は、割といらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら、状況によっては簡易課税が不利となるケースもあるのです。

|簡易課税による消費税の計算

あくまでもざっくりですが、もらった消費税から支払った消費税を差し引いた金額が納税額となります。しかし、簡易課税を選択した場合には、支払った消費税が実額ではなく、みなし仕入率により計算されることとなります。

計算式を簡単に示しますと、

仕入控除税額=課税標準額に対する消費税額×みなし仕入率

となります。実際に支払った消費税ではなく、課税売上に対する消費税額に予め 業種毎に定められた みなし仕入率を乗じて、差し引くことのできる消費税を算出します。

※制度の詳細はこちらになります(国税庁ホームページ)。

◆簡易課税のデメリット

例えばサービス業の場合は、第五種事業となり、みなし仕入率は50%となります。

もし、実際の売上原価及び経費等に生じた消費税額が、売上等から生じた消費税に対して、80%の割合であったとしても、控除できる消費税は売上等から生じた消費税額の50%までとなります。

また、事業を拡大するにあたり支店等建物を建設したり、営業車両やPC等を購入した場合、多くの課税仕入に係る消費税を支払うこととなりますが、それらの金額が売上等から生じた消費税額を上回ったとしても、この制度を選択した場合は、還付を受けることができない のです。

輸出売上が増えて、仕入等に係る消費税が、売上等から生じた消費税額を上回った場合でも同様です。

◆簡易課税のメリット

一方で輸入業者の場合など、みなし仕入率で納税額を計算した方が有利となるケースもあります。

また、そうでなくても本則課税よりも簡易課税の方が、計算コストは下がりますので、管理面から見た判断も重要です。

本則課税の場合、仕入控除の適用を受ける場合には、帳簿及び請求書等の保存が必要であり、また帳簿には所定の記載事項の記載が必要となります。

さらに簡易課税制度には無かった、調整対象固定資産に係る調整や棚卸資産に係る調整があったり、課税仕入の区分経理が必要になる等、管理上、注意すべき点は増えることとなります。

|簡易課税をやめようとした場合

もし、みなし仕入率で計算した消費税よりも多額の消費税を支払っている、あるいは今後大きな設備投資がある、輸出売上が増加している等の場合は、簡易課税を取り止め、本則課税に戻ることも考慮すべきオプションかと思われます。

その場合には、簡易課税選択不適用届出書を本則課税に戻したい年又は事業年度の開始の日の前日までに税務署へ提出する必要があります(本則課税を受ける前年又は前事業年度中に提出可)。

但し、簡易課税を選択されますと二年間又は二事業年度は変更できません。

|留意事項

前々年又は前々事業年度の課税売上高が 5千万円を超えて いる場合は、簡易課税を選択していても、本則課税が強制されますのでご注意ください。

なお、簡易課税の選択期間中に、基準期間における課税売上高が5千万を超え、本則課税となったときに高額特定資産を取得しても、翌期の基準期間における課税売上高が5千万以下であれば、簡易課税となります。

一方、簡易課税を選択しておらず、本則課税期間中に高額特定資産を取得した場合には、基準期間における課税売上高が1千万以下であっても、本則課税となります。その場合には「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」を提出することとなります。

 

選択の判断は

今後の事業計画によるシミュレーションの結果、どちらが有利かを考えることも大切かと思われます。特に還付の機会を逃すことはキャッシュフローの観点からも影響は大きいです。

少し大変ではありますが、概算でも複数期間の売上計画及び設備投資計画を考慮に入れて決断することをお勧めいたします。

なお、管理コストの面ですが、複数の事業を営んでいるケースでは、売上等を事業区分 する必要がありますので、簡易課税であっても管理上の手間は生じることとなります。

これらを踏まえて総合的に判断することが重要かと思われます。

 

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