仕事が忙しい、簿記が面倒、人を雇えない等様々な理由により青色申告ではなく、白色申告を行っている事業者の方はいらっしゃるかと思います。しかし、白色申告の場合であっても簡易とはいえ帳簿の作成義務があり、収支内訳書の提出が必要となります。
帳簿の作成
複式簿記は使用しませんが、収入金額や必要経費に関する記帳を行い帳簿を作成します。その際、取引年月日・相手方の名称・金額を記載します。
作成した帳簿や請求書等(相手方から受領したものを含む)は税務署へ提出する必要はありませんが、一定期間保管しておく必要があります。
帳簿や書類の保存期間は次のようになっております(国税庁資料より)。
収支内訳書の作成
白色申告の場合、青色決算書の作成は行わなくても良いのですが、収支内訳書を確定申告書に添付する必要があり、その内容を見ますと青色決算書における損益計算書等とほぼ変わらない記載項目となっております。
青色決算書との大きな違いは、ほぼ貸借対照表がないだけと言えるでしょう。
|記載項目
損益計算書においては実現主義による売上の集計(売掛金や前受金の調整)、棚卸の実施及び売上原価の計算、発生主義による経費計上、減価償却費の計算、家事費の按分など青色決算と同様に行う必要があります。
また、その他の記入項目は次のようになっております。
① 給料賃金の内訳
② 税理士・弁護士の報酬・料金の内訳
③ 事業専従者の氏名等
④ 売上(収入)金額の明細
⑤ 仕入金額の明細
⑥ 減価償却費の計算
⑦ 地代家賃の内訳
⑧ 利子割引料の内訳
⑨ 本年中における特殊事情
①につきましては、従業員ごとに氏名、従事月数、給与賞与、源泉徴収税額を記入し、③につきましては、氏名、年齢、続柄、従事月数を記入します。
④及び⑤につきましては、上位4社の名称と金額を記入します。
⑥につきましては、固定資産台帳の記載内容と同等の記入が求められます。
→ 名称、取得価額、償却方法、耐用年数、償却率、償却費 など
②⑦⑧⑨については、該当があれば記入することとなります。
|事業専従者控除
青色申告との相違点としまして、事業専従者控除があります。これは事業に従事している親族があれば一定金額を所得から控除できる制度です。控除額の計算は次のように行います。
A. 配偶者であれば86万円、配偶者以外の親族の場合1人50万円
B. 事業専従者控除前の所得金額 ÷(専従者の数+1)
※AとBのうち低い金額となります。
また、事業専従者はその年を通じて6ヶ月以上事業に従事していることが条件です。労務の対価として相当であれば、支払金額が必要経費となる青色事業専従者給与と比べますと、税負担の軽減度合いは低くなります。
青色申告との比較
青色申告を行った場合、青色事業専従者給与の他にも次のような特典があります。いずれも白色申告の場合は認められません。
・青色申告特別控除(65万円又は10万円)
・純損失の繰越控除(3年間可能)
・純損失の繰戻還付(前年の税金の取り戻し)
・一括評価貸倒引当金の設定
・中小事業者の少額減価償却資産の必要経費算入
・小規模事業者の現金主義の適用
・棚卸資産の低価法による評価 など
ここでは白色申告と青色申告とで具体的にどのくらい税金が変わるのか検証してみます。
【ケーススタディ】
個人事業主Xさんの所得金額は5百万円(青色申告の特典を考慮する前)で、その他25万円のPCを7月に4台購入、期末売掛金残高は1百万円、純損失の繰越金額と青色事業専従者給与(配偶者)への支給額は表中の金額とします。
(注)所得控除は基礎控除のみで計算
結果、白色申告ですと約27万円となり、一方青色申告では約2万円で、所得税のみですが約25万円の差異が生じました。またこの他に復興税、住民税、事業税、国民健康保険料があるため影響額は決して少なくありません。
※本年3月15日までに所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出した場合には2019年度から青色申告を適用することができます。
まとめ(Conclusion)
2014年以降、白色申告者であっても記帳と帳簿の保存義務が課されており、白色申告によるメリットはほとんどなくなっております。もし経営状態が良く収入が伸びているのであれば、経理業務に費やす時間や会計ソフトの導入等のコストを差し引いても青色申告のメリットを享受することを選択してみてはいかがでしょうか。
There are few benefits white tax returners enjoy because of revision of individual income tax rule in 2014. If business is well, it might be a good idea to consider that you adopt blue return system even though it would spend much time for accounting works and a lot of money for introducing an accounting software.