他人の土地に建物を建てたとき【個人が借地人の場合】

個人が他者の所有する土地を賃借して建物を建てる場合は、借地権について検討する必要があります。また、無償で土地を利用する場合と賃借料等を支払う場合とでは課税関係が異なります。

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地主が個人の場合

まず借地権とは、建物等の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。建物を所有する目的で他者の土地を賃借する場合において、借地権の設定対価として権利金を支払いますと、賃借人は土地の上地(借地権)部分を取得し、一方、土地所有者は底地部分について地代請求権を有することとなります。

※こちらはイメージ図です。

土地を借りる場合、使用貸借賃貸借の方法があります。使用貸借についてですが、民法では次のように規定されています。

当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取ったものについて無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

 

なお、この場合において借主を借地権者、貸主を借地権設定者という言い方をすることも有ります。

|使用貸借の場合

個人の地主から土地を借りて家を建てる場合ですが、よく有るのは親の土地に子が家を建てるケースです。一般的には援助の意味合いから金銭の授受が行われないのが通常です。

この場合の税務上の取扱いですが、権利金及び賃借料を支払わない場合であっても、個人間の土地の使用貸借であれば、借主は借地権について贈与税課税は行われません。また、賃借料についても親子間での生活費の補填や少額程度であれば通常贈与税課税はされません。なお、地代を支払っていたとしてもその金額が固定資産税相当額以下のときは使用貸借扱いとなります。

一方、個人である地主につきましても権利金の認定課税は行われません。

土地の評価についてですが、借地権の取引慣行のある地域であっても使用権の価額はゼロ円となります。従いまして、土地の所有者である親に相続が発生した場合における土地の評価額は自用地評価となります。使用貸借されている場合は、建物の利用目的が居住用であっても貸付用であっても、自用地として評価します。

|賃貸借取引の場合

他人である個人が所有する土地を賃借して家を建てる場合において、賃借料については通常の地代相当額を支払い、権利金については支払わない又は借地権の金額に満たない金額を支払ったときは、借主に借地権の贈与が行われたものとして贈与税課税されます。

この場合における借地権の評価額は次の算式により求めます。

自用地としての価額ですが、当該土地の過去3年間における自用地としての相続税評価額の平均額となります。なお、権利金の支払がある場合は通常の取引価額から支払額を控除した金額となります。また、相当の地代とは自用地としての価額の6%相当額で、通常の地代とは相当の地代に1から借地権割合を控除した割合を乗じた金額相当額となります。

一方、地主はこの場合においても権利金の認定課税はありません。

賃借料を支払っている場合の土地の評価ですが、自用地評価額から借地権の評価額を控除した金額となります(貸宅地の評価と同じ)。


小規模宅地等の特例」についてですが、使用貸借・賃貸借いずれの場合も子が土地所有者である親と生計一であることが要件ですので、別生計のときは使用することはできません。

 

地主が法人の場合

同族会社の社長が会社の有する土地に建物を建設する場合など、法人が所有する土地を個人が賃借して建物を所有するケースですが、法人が取引に関与しますと、前述の使用貸借により借地権の認定課税が行われないという取扱いは適用されません。

|原則的取扱い

個人が法人の所有する土地に家を建てた場合において、権利金の支払がないときは原則地主である法人には権利金の認定課税が行われ、借地人である個人は法人から借地権の贈与があったものとされます。この場合、借地人には贈与税ではなく所得税が課されます。当該贈与は借地人が役員又は従業員であれば給与所得となり、それ以外の者であれば一時所得となります。

権利金収入及び借地権の評価額は次の計算により算出します。

※土地の更地価額は通常の取引価額となります。

法人側では役員報酬とされた場合は、定期同額給与等以外の給与のため損金不算入となり、かつ源泉所得税の徴収漏れとなる可能性があります。

 

但し、相当の地代を支払っている場合は、権利金について認定課税が行われる取引形態であっても認定課税は行われません。相当の地代の金額ですが、土地の更地価額の6%相当額となります。なお、相当の地代の算定における土地の更地価額は、通常の取引価額に替えて下記 a ~ c のいずれかとすることも可能です。

    1. 公示価格などから合理的に計算した価額
    2. 相続税評価額
    3. 相続税評価額の過去3年平均額

 

また、貸主である法人側ですが、借地権の設定により他人に土地を使用させる場合、下記の算式による割合が10分の5を超えるときは、土地簿価の一部損金算入が認められます。

算式:(設定直前の土地の価額-設定直後の土地の価額)÷ 設定直前の土地の価額

無償返還届出

権利金の支払がない場合であっても、土地の無償返還に関する届出書を借地人等との連名により法人の納税地の所轄税務署へ提出した場合には、権利金の認定課税は行われません。なお、前述の個人間の使用貸借の場合は当該届出書を提出する必要はありません。

留意点としまして、地代は権利金とは別の話となります。無償返還届出を提出した場合であっても、実際に支払われる地代が相当の地代に満たないときは、その差額につき地代の認定課税が行われ、借主には所得税が課税されます。借主が法人の役員又は従業員であれば給与所得、それ以外の者であれば雑所得となります。

貸主である法人側ですが、相当の地代と実際の地代の差額についても受取地代として収益計上し、かつ借主に対する寄付等として経理処理することになります。

土地の評価についてですが、無償返還届出が提出された場合は借地権はゼロ円となります。

底地の評価額は自用地価額ではなく自用地価額の20%を控除した金額となります。
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異動があった場合

借地権は設定時だけでなく、その後においても税務上気を付けた方が良いケースがあります。具体的には借地権が設定されている土地やその上に存する建物について、相続や贈与又は譲渡による異動があった場合です。

|借地権の転借

例えば親が他人である地主から土地を借りて家を建てた場合において、その後、子に建物を贈与したときは、建物だけでなく借地権についても贈与税が課される可能性があります。

そこで借地権については使用貸借であり、借地権は依然として借地権者にあることを示す為に、「借地権の使用貸借に関する確認書」を税務署へ提出することにより、借地権の贈与税課税を回避することができます。

借地権の使用貸借に関する確認書は、借地権者(親)と借受者(子)の他、その土地の所有者(地主)の承諾も必要となります。

届出がない場合は、親に相続が発生した時に借地権の使用貸借なのか、借地権を贈与されたのか等についてわからなくなってしまいます。

|底地の取得

続いての例ですが、親が他人である地主から土地を借りて家を建てた場合において、その後、子がその借地権の目的となっている土地を購入したとします。このケースで子が親から地代を受け取っていないときは使用貸借扱いされ、子は父から借地権の贈与を受けたものとされます。

そこで借地権者の地位に変更はなく、従来の賃貸借契約は維持されており、単に新たな地主が地代の免除を行っていることを示す為に、「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を税務署へ提出することにより、借地権の贈与税課税を回避することができます。

借地権者の地位に変更がない旨の申出書は、土地取得者(子)と借地権者(親)の連署により提出します。提出がなく相続が発生したときは、建物だけでなく借地権についても相続財産とされる可能性があります。

 

まとめ(Conclusion)

借地権を認識する場合は、その時の課税関係に影響するだけでなく、相続財産となる為、将来財産の分配にも影響を及ぼします。土地の所有者と建物の所有者が異なるときは注意が必要です。その場合は税務署に確認書や申出書が提出されていないか確認した方が良いでしょう。

If the land leasehold right is recognized, it will affect not only the calculation of tax at that time, but also the distribution of property in the future because it will be regarded as an inheritance asset. When the owner of land and the one of building are different, it would be better to check whether the introduced confirmation or application are submitted to the local tax office or not.

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