源泉徴収漏れがないように注意すべきポイント

法人や個人事業主が、給料など一定の支払いをしたときに生じるのが、源泉徴収義務です。具体的なケースや気を付けなければならないポイントをまとめてみました。

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源泉徴収義務

利子、配当、給与、退職金、公的年金、報酬料金等の支払いをする者はその支払金額について所得税及び復興特別所得税を源泉徴収をする義務があります。

給与の支払いであっても、常時2人以下の家事使用人のみに対し行う場合には源泉徴収は不要とされております。

源泉徴収する時期は、実際に対象となる所得を支払うときです。例外としまして剰余金の配当等や法人の役員賞与などは、支払が行われていなくても支払確定日から1年を経過した日に源泉徴収する必要があります。

|源泉税の納付

納付期限は原則として源泉徴収をした月の翌月10日です。期限を超えてしまうと延滞税や不納付加算税が課されます。

|納期の特例

給与等の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例承認に関する申請書」を提出し承認を受けたときは、給与等、退職手当等、税理士等の報酬について年2回にまとめて納付することができます。

1月から6月までの源泉税 → 納期限:7月10日

7月から12月までの源泉税 → 納期限:翌年1月20日

 

例えば3月に申請書を提出した場合には、4月末に承認されたものとされますので、4・5・6月に支払った給与に係る源泉税は、7月10日に納付すればよいこととなります。

|納期の特例の取りやめ

納期の特例の承認を受けている者が、常時10人未満でなくなったときは、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出しなければなりません。

但し、”常時”ですので、繁忙期にのみ一時的に10人以上となった場合は提出は不要です。

注意すべき点としましては、例えば3月にこの届出書を提出しますと、4月10日に納付する源泉税は、3月支払給与のみならず、1月と2月に支払った給与に係る源泉税も納付することになります。

 

給与所得の範囲

従業員に対して毎月支給する給与の他、諸手当や経済的利益についても金額の多寡や状況によっては給与に含め、源泉徴収の対象となります。

裏を返せば、定められた範囲内で手当の支給や経済的利益の供与をすることで、無税で従業員への福利厚生を行うことができます。

ご参考までに主な非課税の範囲について下記に掲載します。

通勤手当

公共交通機関等の利用で1ヶ月15万円以下(自動車による通勤は通勤距離により別途金額の定め有り)

旅費交通費

出張旅費で通常必要とされる費用の支出(日当などは同業他社と比べ金額が多寡でないこと、役員及び使用人のバランスが保たれていること)

永年勤続記念品

社会通念上相当な額(1万円くらい)で概ね10年以上の勤務者を対象(2回以上のときは概ね5年以上の間隔を空けていること)

社員旅行

旅行期間が4泊5日(海外の場合は滞在日数)で全従業員の半数以上が参加し、自己都合の不参加者に参加に代えて金銭を支給しないこと

社内販売

自社商品の値引き販売で社員への販売価格を、取得価額以上かつ通常販売価額の70%以上で行い、値引率が一律であり、数量が通常家事で消費する程度であること

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給与と外注費の区分

業務の一部を自社で賄うのではなく、外注(個人)に出すケースでは注意が必要です。もし、外注費処理していた案件が給与と認定されますと、源泉徴収漏れとなり、また消費税についても不課税仕入となりますので、追徴課税が発生することになります。

給与か外注費かの判定は次の4点を総合的に勘案して行われます(Yesであれば外注費、Noであれば給与)。

・契約の内容が他人の代替を受け入れる

・役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けない

・引渡しが完了していない完成品が不可抗力により滅失した場合等でも報酬の請求を行うことができない

・材料又は用具が供与されない

 

その他注意すべきポイントとしましては、請求書を発行していなかったり、従業員と同様に勤務時間・勤務場所が指定されている場合は、給与と認定される可能性が高くなります。

非居住者に対する支払

非居住者は、PE(支店等の恒久的施設)がなければ事業の所得や一定の株式の譲渡所得は非課税となります。しかしそれ以外の所得の支払いについては、源泉徴収を行うこととなります。

|給与に係る源泉徴収

外国人を採用されるケースは年々増えておりますが、源泉徴収には注意が必要です。 1年以上日本に居住している方でしたら、日本人社員と同様に行いますが、そうではなく非居住者(日本に住所又は居所を有する期間が1年未満)に該当する場合は、20.42%の源泉徴収を行うこととなります。

但し、中国人留学生をアルバイトで採用する場合など、租税条約により免税となるケースがあるため、事前に租税条約に関する届出書を提出してもらうようにしましょう。

|不動産に係る源泉徴収

非居住者から不動産を購入して代金を支払うときは、10.21%の源泉徴収が必要です(1億円以下で個人の居住用を除く)。

また、非居住者から事務所を賃貸した場合には、支払賃貸料から20.42%を源泉徴収することとなります。

これらは個人であっても源泉徴収義務が生じます。

まとめ

源泉徴収は意図的でなくても知らず知らずのうちに漏れてしまう税金です。特に海外進出をしている会社様は注意が必要です。

例えば海外出向社員が一時的に帰国し、給与格差補填を行っている日本本社の会議等に参加した場合、その日数分に相当する給与が、また海外出向から帰任した社員の外国所得税を日本本社が支払った場合にはその金額が、源泉徴収の対象となります。

取引が複雑化すればするほど判断も難しくなりますので、専門家のサポートも含めしっかりと事前に確認をするようにしましょう。

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