租税条約の活用により税負担を軽減させる方法

非居住者や外国法人へ利子、配当、使用料その他一定の支払いをする場合には源泉徴収が必要となりますが、租税条約を活用することで軽減されるケースがあります。

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居住形態の判定

租税条約を確認する前にやるべきことがあります。支払先が個人である場合、日本人であれば居住者か非居住者か、外国人であれば永住者か非永住者か非居住者かを判別する必要があります。

|判定方法

国内に住所又は引き続いて1年以上居所があれば居住者となります。外国人で居住者とされた場合は、さらに過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間が5年以下であれば非永住者、そうでなければ永住者に区分されます。

所得税法施行令14条及び15条において推定規定が定められており、

・国内又は国外で1年以上働くか

・その国の国籍と生計一の親族を有するか

・国内における職業及び資産の有無

 

以上の点を考慮して「日本に居住する」又は「海外に居住する」と判断されます。また所得税法基本通達3-3も踏まえますと、日本人で海外赴任者の場合は、赴任期間が1年以上の予定であれば非居住者、そうでなければ居住者と判断することとなります。

外国人で日本へ働きに来ている場合は、1年以上滞在予定であれば居住者、そうでなければ非居住者と判断します。即ち基本的に来日後最初の5年又は通算で5年までは非永住者という扱いになります。

|課税所得の範囲

上記の区分によって課税範囲は異なります。永住者は全ての所得に課税され、非永住者は国外源泉所得以外の所得及び国内で支払われたもの、国外から国内へ送金されたものが課税されます(非居住者は国内源泉所得のみが課税対象)。

そして課税方法ですが、所得の内容により定められた源泉税率が適用されます。例えば配当であれば、PEのない非居住者は源泉分離課税となりますが、PEのある非居住者は源泉徴収の上、総合課税となります。

恒久的施設の考え方

恒久的施設(PE:Permanent Establishment)とは、簡単に説明しますと、①支店等、②建設作業場、③契約を締結する権限のある者 の3つのものをいいます。

なお、倉庫は恒久的施設には含まれません。従いまして米アマゾンは日本の課税を受けないという理屈です。

PEがなければ事業所得は課税されないのが原則ですが、それでは源泉地国では税金を徴収できない為、主に新興国ではサービスPEと称して課税されるケースがありますので注意が必要です。

租税条約について

租税条約とは課税権を有する各国の間で、主に二重課税の排除と脱税の防止の為に締結される条約です。

日本におきましては、非居住者は租税条約により源泉所得税が減免されるケースがありますが、その場合には、配当、利子、使用料などにより定められた様式の「租税条約届出書」を源泉徴収義務者を経由して所轄税務署長に提出する必要があります。

|活用事例

例えば海外子会社へ出向している社員が日本株の配当を受け取る場合は様式1を用い、短期滞在である留学生がバイト先から給料を受け取る場合は様式8を使用します。

なお相手国によっては特典条項があり、その場合特典条項に関する付表さらに居住者証明書の添付が必要となりますのでご留意ください。

 

租税条約届出書は国税庁のホームページからダウンロードできます。ダウンロードした後に入力を行います。

|海外から支払いを受ける場合

海外子会社を含む国外からの支払いを受ける場合には、現地国にある海外子会社等は、現地国のルールにより源泉徴収を行うこととなります。そして各国により源泉徴収の対象や源泉徴収税率は異なります。ときには思わぬ高額な課税がされることもあるのです。

しかし租税条約締結国の場合、内容によっては日本への支払いに係る源泉税を一定の手続きをすることにより減免することができます。

例えばインドネシアの場合ですと、DGTフォームというインドネシア税務当局が指定する居住者証明書を用意することで、通常配当等に係る源泉税率20%を10%に減免することができます。

 

※日本の税務署へ同書類を提出する際、和訳文が必要となります。当事務所では翻訳作業を承っていますのでお気軽にお問い合わせください。

まとめ(Conclusion)

租税条約は国内法よりも優先されるため、海外取引を行う事業者は知っておくべきルールです。顧問税理士が海外取引に疎い場合には、税金コストを下げるチャンスを見逃してしまう可能性があります。交代までしなくてもセカンドオピニオンとして、当該知識を持つ専門家とネットワークを築くことが必要でしょう。

Tax treaty should be taken priority over domestic law. So, if you are not interested in this rule, it is possible to miss the chance of reducing tax costs. It would be better to have a tie with consultant having knowledge in international tax.
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