役員報酬の留意点の解説【経済的利益や金額設定など】

法人成りをした場合、役員報酬の設定金額をどのようにするかにより個人を含めた税金や社会保険料の負担額が変わってきます。しかし役員報酬は損金算入されるものは限られており、そのルールを理解しておくことが重要となってまいります。

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役員給与の取扱い

役員に対する給与(役員報酬)については損金算入の要件だけでなく、特に同族会社の場合、役員の範囲や使用人兼務役員などについて知っておくことが大切です。

|役員の範囲

役員の範囲についてですが、法人税法におきましては会社法に規定する役員の他にも役員に該当する場合があります。次の者はみなし役員として役員扱いされます。

      1. 使用人以外の者でその法人の経営に従事するもの
      2. 同族会社の使用人で、株式の所有割合が50%基準、10%基準、5%基準を満たしかつ経営に従事しているもの

 

aの例としましては顧問や相談役などが該当します。

bの判定についてですが、同族会社の判定で使用した割合を用います。持株割合では同族会社に該当しないが、議決権割では同族会社に該当するときは、議決権割合によることとなります。

また、同族会社の役員で上記の株式所有割合の要件を満たしている者は、使用人兼務役員とはされません。従いまして、仮にその該当者に従業員として賞与を支給したとしても、法人税法上は役員への臨時給与となるため、事前確定届出給与でない限り損金不算入となります。

|経済的利益

役員への報酬ですが、金銭で支払われるものだけでなく経済的利益も範囲に含まれます。経済的利益の内容ですが、国税庁ホームページのタックスアンサーに事例として以下の項目が掲載されております。

(1) 資産を贈与した場合におけるその資産の時価

(2) 資産を時価より低額で譲渡した場合における時価と譲渡価額との差額

(3) 債権を放棄し又は免除した場合における債権の放棄額等

(4) 無償又は低額で居住用土地又は家屋の提供をした場合における通常収受すべき賃貸料と実際に徴収した賃貸料の額との差額

(5) 無利息又は低率で金銭の貸付けをした場合における通常収受すべき利息と実際に徴収した利息との差額

(6) 役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約の保険料の全部又は一部を負担した場合における保険料の負担額

 

(1)、(2)の他、役員が不動産等を会社側に譲渡し、通常の時価よりも高価で買入れた場合における譲渡価額と時価との差額も経済的利益に該当します。

(3)は、役員が会社からの借入金につき、弁済できなくなった場合に支払いを免除してもらったり、個人的な費用を会社に肩代わりしてもらううケースなどで、現物給与扱いとなります。

(4)ですが、社宅の貸与の場合、賃貸料相当額として一定金額を役員が支払っている場合には、経済的利益は発生しません。但し、その社宅が使用者所有の物件か、他から借り受けた物件かなどにより賃貸料相当額の計算式が異なる為、注意が必要です。

(5)ですが、特例基準割合(2019年は1.6%)以上の利率であれば、給与課税はされません。また、会社が平均調達金利など合理的な貸付利率により、役員へ貸し付けているとき等は、特例基準割合以下であっても課税なしです。

(6)の例としましては、養老保険で会社が契約者となり、死亡保険金と生存保険金の受取人が被保険者である役員又はその遺族となっているケースです。

|損金算入される役員給与

損金に算入される役員給与は以下のものに限られます。また、以下の給与であっても不相当に高額なものや仮装隠蔽行為によるものは損金不算入となります。

①定期同額給与

支給時期が1月以下の一定期間ごとでその事業年度内の各支給額が同額であるものをいいます。金額についてですが、2018年4月1日以後の支給決議分は、支給額又は支給額から源泉所得税や社会保険料を控除した金額が対象となります。

なお、給与扱いとなる経済的利益(社宅の家賃負担や低率による貸付など)であっても、継続的に供与され、毎月概ね一定金額である場合は、定期同額給与に該当し損金に算入されます。

②事前確定届出給与

所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与をいいます。届出期限(e.g.株主総会決議から1月以内)までに所轄税務署長へ届出を行う必要があります。従いまして、届出のない又は届出内容と異なる金額の賞与等を役員に支給した場合は、その全額が損金不算入となります。

③業績連動給与

同族会社以外の法人が業務執行役員に対して支給するもので、有価証券報告書に算定指標となる利益が記載されるものに限るため、上場企業のみが対象となります。

 

上記①~③に該当するものであっても、不相当に高額な金額や仮装隠ぺい経理によるものは、損金に算入されません。

 

|不相当に高額な金額

不相当に高額な金額、いわゆる過大役員給与の判定方法ですが、実質基準と形式基準があります。

イ.実質基準

各役員ごとに、実際支給額(使用人兼務役員の使用人分含む)と職務内容や法人の収益等から勘案し相当とされる金額との比較を行い判定します。この場合、法人税法上の役員が対象となります。

なお、使用人兼務役員に対して支給する使用人部分に係る賞与につきましては、他の使用人と異なる時期に支給した場合は損金不算入となりますが、同時期に支給し、かつ金額が適正額の範囲内であるときは損金に算入されます。

ロ.形式基準

定款や株主総会決議等により定めた報酬限度額に照らして判定を行います。判定は取締役合計、監査役合計ごとに行います。なお、対象となるのは会社法上の役員のみです。

使用人兼務役員の使用人分を報酬限度額に定めていない場合は、使用人分相当額(支給額と類似使用人給与のうち少ない方)は控除して判定を行います。

イ又はロのいずれかが過大となった場合は、その過大とされた金額は損金に算入されません。イ及びロのいずれもが過大とされた金額があるときは、そのうち大きい方の金額が損金不算入額となります。

役員給与が過大とされないためには、役員の勤務実績や会社への貢献度等を文書化し、議事録等をしっかりと残すことも大切かと思われます。

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報酬金額の変更

会社の業績変動や役職の変更などにより、役員への報酬金額を変更することはありますが、法人税では定められた時期や理由等の要件を満たすことが求められます。

|定期同額給与の改定

次の場合における給与改定で、改定前後の金額がそれぞれ同額のものは定期同額給与とされます。

      1. 期首から3ヶ月以内の改定(定時株主総会による改定)
      2. 役員の職制上の地位の変更等の事情による改定(臨時改定事由)
      3. その法人の経営状況が著しく悪化したことによるもの(業績悪化改定事由)

 

ⅰですが、確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合には指定に係る月数プラス2の月数となります。

ⅱは取締役から監査役となった場合などです。

ⅲは増額改定は認められず、減額改定に限ります。

|事前確定届出給与の変更

事前確定届出給与の届出は、株主総会決議によりその定めをした場合におけるその決議をした日から1ヶ月を経過する日と、その会計期間開始の日から4ヶ月を経過する日のうち早い日までに行う必要があります。

既に届出をしている内容を変更する場合ですが、下記のそれぞれの日までに届出を行わなければなりません。

臨時改定事由・・・事由が生じた日から1月以内

業績悪化改定事由・・・変更に関する決議をした日から1月以内

 

 

ケーススタディ

ここでは上記の他に役員給与になる可能性のある取引事例をご紹介致します。

|社有車の利用

役員が社有車を業務に使用する場合に生じる費用は経費となりますが、私的に利用し役員の自宅を保管場所としており、運転日誌がない、あるいは記載内容と走行距離メーターに大きな乖離があったりしますと、否認される可能性があります。

|海外渡航費

海外出張に係る経費ですが、業務遂行上必要なものであり、かつ渡航の為に通常必要と認められる金額は費用とされます。具体的には得意先との商談、現地工場の視察、展示会等への参加などが挙げられます。

一方で観光目的(同業者団体等が主催するものを含む)の渡航は原則業務遂行上必要なものとはされません。この場合要した費用は給与扱いとなります。また、商談と観光を併せて行った場合の旅費等は、それぞれの日数により按分計算を行います。

|業務委託費

コンサルティング料などの名目で、役員へ給与以外に支給する場合ですが、実態の伴わないものや経済的合理性のないものは否認される可能性が高いです。その場合、会社側から見ますと給与の源泉徴収漏れ、役員給与の損金不算入、消費税の仕入控除税額の否認の三重苦となります。

 

報酬金額の設定

個人事業主か法人形態か、事業スタイルを決定する際、役員報酬の金額設定は大変重要な要素です。所得税は超過累進税率(5~45%の税率)に対し、法人税は固定税率23.4%(中小法人の8百万円以下は15%)となっている為、年間所得又は利益に対して、役員報酬金額をいくらにするかにより負担税額が変わります。

役員報酬を利益と同額にすれば法人税は発生しませんが、個人の所得税、住民税、社会保険料の問題があります。社会保険料については会社負担分も伴います。一方で役員報酬を少なく設定しますと税金及び社会保険料は減少しますが、将来の退職金の受取額が減少する懸念が生じます。

 

また、配偶者や親族の従事者又は従業員がいる場合は、彼らの人件費も考慮する必要があります。

法人になれば社会的信用度は上がり、採用活動も有利となりますが、一方で赤字であっても均等割の負担があったり、経理や税務申告作業は個人事業のときよりも大変なものとなります。

 

まとめ(Conclusion)

役員報酬は数字に関する確認作業が不可欠です。改定における総会議事録に記載する決議日の確認、(使用人兼務)役員の配偶者等も含めた持株数の確認、経済的利益とならないための賃貸料の計算など、細心な注意を要します。しかしルールを理解しうまく活用することで、税金や社会保険料の負担を抑えることも可能となります。

It is indispensable to confirm any figures related to directors’ remuneration. Please pay closely attention to the day of resolution on minute of ordinary shareholders’ meeting, the number of shares held by directors’ and their relatives, appropriate amount of fringe benefit or else. Though, it would be possible to reduce burden of tax and social insurance premium by utilizing knowledge regarding regulations of directors’ remuneration.

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